「再建築不可物件って価格が安いけど、購入しても大丈夫?建て替えできない以外にも不都合があるのかな……」
家の購入を検討している人の中には、通常の不動産よりも価格がリーズナブルな再建築不可物件の購入を迷っている方も多いと思います。
結論からお伝えすると、再建築不可物件はマイホームとしては向きません。
リフォームで手を加えてよい範囲も限定的であるため、一生住むつもりで購入しても家屋の寿命を先に迎える危険があるからです。
そこで今回は、再建築不可物件の購入に関する以下の内容をお伝えします。
- 再建築不可物件の購入はやめておいたほうが良いかどうか
- 再建築不可物件のメリットとデメリット
- 再建築不可物件の購入に向いている人の特徴
- 再建築不可物件の購入を検討するときの注意点
本記事を読めば、再建築不可物件を購入するメリット・デメリットがわかり、自身が購入に適しているか否かを判断できます。
再建築不可物件の特性を理解し、あなたにとって最適な物件の取得を目指しましょう。
再建築不可物件の購入はやめておいたほうが良い?
再建築不可物件とは、いま家が建っていても建て替えができない土地を指します。
再建築不可物件となる代表的な要因は以下の3つです。
- 前面道路の幅員が4m未満
- 敷地に接道する間口が2m未満
- 接道道路が建築基準法上の道路ではない
再建築不可物件は、救急車・消防車などの緊急車両の通行を妨げになり、住民の安全性が確保できないため、さまざまな建築制限がかかります。
そのため、再建築不可物件の購入前に、自身が向いているかどうかを購入前に把握しておく必要があります。
まずは、次章で再建築不可物件のメリット・デメリットを見ていきましょう。
再建築不可物件のメリット
再建築不可物件のメリットは以下のとおりです。
- 購入費用を安く抑えられる
- 固定資産税が比較的安い
再建築不可物件の大きな利点は、購入価格が通常物件よりも割安であることです。
建築基準法第42条の「幅員4m以上の道路に間口が2m以上接する」という接道義務を果たしていないため、再建築不可物件は資産価値が低く安価になります。
そのため、近隣の類似物件よりも3割〜7割ほど安価に取得できるケースもあり、購入費用を抑えたい方には大きなメリットがあります。
再建築不可物件の売却相場については、以下の記事で詳しく解説しています。
再建築不可物件のデメリット
再建築不可物件のデメリットは以下のとおりです。
- 建て替えができない
- 大規模なリフォームはできない
- 住宅ローンが通りにくい
再建築不可物件のもっとも大きなデメリットは、建て替えができないことです。
家屋が寿命を迎えても部分的なリフォームしか行えないため、いずれ建物が老朽化した際には、解体後の更地としての価値しか残らないからです。
また、リフォームや増築にも制限が加わるため、住まいとしての快適性や機能性を高めることが一般的な物件に比べて難しくなります。
加えて、住宅ローンの融資がほぼ受けられないため、購入時には現金一括払いが必要となり、買い手を見つけにくいです。
再建築不可物件を購入する際には、これらのデメリットを考慮した上で費用対効果を推し量る必要があります。
なお、再建築不可物件を購入して後悔した事例については、以下の記事で紹介しています。
再建築不可物件の購入に向いている人
再建築不可物件は建築基準法に適合していないため、建築制限が伴います。
しかし、再建築不可物件は価格が比較的安価であるため、特定のニーズや活用方法をもつ買い手にとって魅力的な選択肢となることがあります。
再建築不可物件の購入に向いている人は以下の2つです。
- 自分でDIYできる人
- 賃貸利用を目的としている人
自分でDIYできる人
自分でDIYできる人は再建築不可物件の購入に適しています。
再建築不可物件は昭和25年よりも前に建築された不動産が多く総じて築年数は古めです。
そのため、低予算で不動産を手に入れてDIYでポイントで修繕を施していきたい方にとってはメリットが大きいと言えます。
例えば、建築制限の範囲内で既存の建物を活かし、自身のニーズに合わせたリフォームや改築を行えるのであれば、DIYで住宅・小規模なオフィスとしても活用可能です。
ただし、長期にわたるメンテナンス費用・リフォーム費用の計画も考える必要があります。
再建築不可物件の購入後に後悔しないためにも、家屋の状態を確認し、「定期的なDIYでどの程度の費用がかかるか」を把握した上で、計画的に作業を進めることが重要です。
再建築不可物件のリフォームが可能な範囲については、以下の記事で詳しく解説しています。
賃貸利用を目的としている人
再建築不可物件を賃貸経営の目的で購入するのであれば、高い収益性が見込める可能性があります。
賃貸経営のもっとも大きな費用である物件購入費用を安く抑えられるため、家賃収入で早期に初期費用を回収できるからです。
したがって、不動産投資の初心者や、比較的少ない資金から始めたい不動産投資家にとっては魅力的です。
ただし、家屋の安全性と寿命を考慮して長期的な運用コストを計算しておく必要があります。
不動産投資による収益は家賃収入・売却益の2つしかなく、家屋の寿命が短い再建築不可物件は売却益は期待できません。
そのため、確実に家賃収入で黒字化できるよう賃貸経営が成立する諸条件を備えているかどうかの見極めが重要です。
再建築不可物件の購入を検討するときの注意点
再建築不可物件は価格の面では魅力的ですが、さまざまなリスクや制限が伴うため、購入には慎重な判断が必要です。
再建築不可物件の購入を検討するときの注意点は以下の6つです。
- 建物(躯体)の状態を確認しておく
- リフォームできる範囲を確認しておく
- 隣地との境界線が明確かどうか確認する
- 値下げ交渉を行う
- インフラが通っているか確認する
- 風通しや日当たりを確認する
どのような点に注意して購入したらよいかを正確に判断し、購入後の後悔を回避しましょう。
建物(躯体)の状態を確認しておく
再建築不可物件の場合、建物の構造や基礎の状態が将来にわたって利用可能か、確認が必要です。
建物全体を支える躯体の部分に欠陥があると、後々のリフォームでも修繕しきれない可能性があるからです。
例えば、建物の基礎部分は家全体を支え、地震などの災害に遭ったときに、そのエネルギーを地盤に逃す重要な役割があります。
基礎部分に定期的に塗装するなどメンテナンスがなされていなかった場合、地震や台風などが起きた際に、家屋が倒壊する危険性が高まります。
再建築不可物件は、仮に自然災害で倒壊したとしても建て替えができないため、家屋の主要部分の劣化具合は購入前に確認が必要です。
リフォームできる範囲を確認しておく
再建築不可物件に施せるリフォームの範囲は限られているため、購入前に確認しておきましょう。
再建築不可物件にできるリフォームは建築確認申請が不要な範囲でしか行えません。
建築確認申請が不要な範囲のリフォームとは、壁・柱・床・はり・屋根・階段などの主要構造部で1/2以内の工事に限定されます。
例えば、30本の柱が使われている家屋であれば、15本は交換が可能です。
ただし、再建築不可物件は建築基準法が制定される1950年より前に存在していた家屋であるため、総じて築年数が古い傾向にあります。
そのため、柱の半分だけ交換して家屋の耐久性が高められたとは言いにくいところです。
再建築不可物件を購入する際は、建物の状態・リフォームできる範囲の確認が欠かせません。
再建築不可物件の「柱一本残せばリフォームできる」の真相については以下の記事で詳しく解説しています。
隣地との境界線が明確かどうか確認する
再建築不可物件を購入する際は、隣地との境界線が明確にされているかもチェックしましょう。
境界線が不明瞭である場合、将来的に隣地所有者との間で紛争が発生する可能性があるからです。
例えば、古くから存在する再建築不可物件は、隣地との堺にブロック塀や植栽を設置して「ざっくりこの辺」といった具合に境界を決めている場合があります。
相続による代替わりがあると、隣地所有者との関係も希薄になり、認識にズレが生じることから後々、越境問題でトラブルに生じる可能性があるのです。
隣地との境界線を明確にするためには土地家屋調査士の確定測量が必要となり、35万円〜80万円程度の費用がかかります。
物件購入後の隣地所有者とのトラブルを回避するためにも、再建築不可物件の購入前に隣地との境界線が明確かどうか確認しておきましょう。
値下げ交渉を行う
再建築不可物件を購入する際は、売主・不動産会社に値下げ交渉を行うのも重要です。
前述したように、再建築不可物件を住宅・賃貸経営として活用するには、家屋の残りの寿命とリフォーム費用等による出費を突き合わせて検討が必要だからです。
築年数が古ければリフォーム費用は高額になり、売却益が見込めない分、賃貸経営では確実に黒字を出しておかなければなりません。
したがって、売却価格が通常の不動産より安価な再建築不可物件でも、できる限り採算がとれるよう価格交渉しておくのがベターです。
インフラが通っているか確認する
再建築不可物件が位置する地域のインフラ状況も、購入前に確認しておくべき重要なポイントです。
水道・電気・ガスといった生活に必要な基本的なインフラが利用可能かどうかは、生活利便性に大きく影響します。
加えて、インフラ整備を購入後に自身で行うのであれば、整備費用も念頭に置いておかなくてはなりません。
例えば、下水道管がない再建築不可物件であれば、浄化槽の設置が必要となるため、80万〜100万円程度の費用が必要です。
こうしたインフラの未整備は、過疎地や山間部などの再建築不可物件で起こりがちです。
再建築不可物件を購入する前に、インフラ整備が整っているかを確認しておく必要があります。
風通しや日当たりを確認する
再建築不可物件であっても、居住するにあたって日中の自然光の入り具合や、通風の状態が良好かどうかは、住まいの選択基準として重要です。
風当たりや日当たりは物件の快適性を左右する重要な要素だからです。
とくに、日当たりが良好だと、カーテンを開けた際に太陽の日差しを浴びるため、幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」という神経伝達物質が生成され、精神が安定しやすくなります。
反対に日当たりが悪いと日差しが浴びれないだけではなく、室内に湿気がこもりやすくなり、カビが発生して住環境を損ねることにつながりかねません。
風通しや日当たりを確保するには、窓と窓が対面、もしくは壁の2面以上に窓があり、かつ南向き(日光の差し込む時間が長い)であるのが理想的です。
再建築不可物件の購入前に見学する際には、風通しや日差しが良好であるか確認しておくことで、居住における快適性を担保できると言えます。